つくるのは制作物ではなく価値だ
私たちは案件を実行する中で、本当に成果を出せているのか?を自問自答してきました。成果を出すためには、様々な問題の“解決”を図る技術力や企画力はもちろん重要です。しかし、分析を重ねる中でわかってきたことは、そもそもの問題の“発見”から実施しなければ成果に結びつかないという単純な答えでした。
SONICJAMでは、いかに「本当に解決すべき問題」を見つけ実行するか、その問題発見のプロセスをブランド・リフレーミングと呼び(問題を捉え直して、本当の問題を発見する)、プロジェクトに組み込む方針で動き始めました。
<リフレーミングとは>
リフレーミングとは、物事の捉え方や視点を変えることで、新しい意味や価値を見出す思考法です。たとえば、「この製品は高すぎる」と捉えるのではなく、「この製品は長持ちし、長期的に見れば経済的だ」 と捉えるようなことを指します。
ブランド・リフレーミングの必要性
17カ国の上場・非上場企業91社106人の経営者の調査で企業が苦労しているのは問題の解決ではなく、問題の洗い出しであることがわかった。
あなたの組織は問題の診断が苦手か?という問いに対し、85%の回答者がそう思う、または非常にそう思うと回答し、87%がその弱みのせいでかなりの損害が出たか?という問いに対しそう思うまたは非常にそう思うと答えた(HBR2018年2月号より引用)
どの企業も、対処すべき問題がわかっている場合は、その解決策を実行して成果を出すのは得意だと認識しています。つまり本当に困っているのは解決策の実行ではなく「何を問題と捉えるか」にあります。
問題もその捉え方次第で解決の糸口となる発想が生まれるかが左右されます。そこでブランド・リフレーミングの出番になります。
たとえば 「売上を2倍にする」という問題に対し、「人を2倍に増やす」「営業件数を2倍にする」という目標を立てたとして、それは本当に実行可能でしょうか?もっと問題の枠組みを変えてみる(リフレーミング)ことが必要なのです。
ではリフレーミング(問題の捉え直し)を、実際のプロジェクトのフローの中で、どのように実践すればよいでしょうか。
問題に対してすべてをリフレーミングするというのは現実的ではなく、また単純な現状の問題に対してリフレーミングしても、運用的な改修にしかなりません。そこで私たちは、あるべき姿を描く際にリフレーミングを行うことにしています。
まずは価値の特定から
私たちは本質的な問題を発見する方法について、まず現状の価値を明らかにすることが最初のスタートであると捉えています。
その単位が、企業の価値か、ブランドの価値か、商品やサービスの価値かなどの粒度はありますが、いずれもどんな価値を有しているのかを明らかにしなければスタートラインに立てません。
またこれは、BtoB・BtoC、業種・業態などの違いは一切関係ありません。利用者にとっての価値が明確に伝わることで可処分時間を奪えるようになるという構図は、どのターゲットにおいても変わらないからです。
<価値とは>
企業は商品やサービスに対して何らかの“価値”を創り出し、“価値”を伝え、その“価値”を必要な人に届けることでその対価を得ています。では”価値”とは具体的にどう理解すればよいでしょうか。
価値とは、提供側の価と、受け取り側の値が釣り合っている状態のことを指します。
提供側と受け取り側のどちらか一方だけが価値への評価を主張しても、それは価値にはなりません。また、普遍的に価値があるものは存在せず、利用文脈によって変化するという前提に立つ必要があります。
たとえば「30代~40代の男性が缶コーヒーを買う」というような定義ではなく、「お酒を飲みすぎたから翌日は、ミルク入りの缶コーヒーを選んだ」というような利用文脈の中から価値を抽象的に捉えていく必要があるのです。
価値については様々な分類方法がありますが、その一つに商品やサービスが持つ基本機能によって直接的にもたらされる「機能的価値」と、顧客が商品やサービスを使用することによって得られる満足感などの「意味的価値」に分類する方法があります。
機能的価値は競合に代替されやすく、そして広告側で変えられるものでもありません。意味的価値は十分に差別化されている必要があり、広告コミュニケーションにおいては特にすべてのコミュニケーションの大元となります。
リフレーミングによる、本質的な問題を導くステップ
- 調査
最初に、現状の価値を明らかにするためにいくつかの調査を行います。端的にいうと3C分析ですが、対象となるテーマで調査手法も変わってきます。オープンな調査、クローズドな調査、定量的な調査、定性的な調査など、様々な手法を組み合わせます。
UXを主体として進めている場合には、エクストリームユーザーのデプスインタビュー調査を行うことを大切にしています。
この段階で明らかになった問題は、抽象化する必要があります。 そしてこの段階では、まだリフレーミングする必要もありません。(すでに運用にのっている場合を除く)
次に競合調査を行いますが、類似サービスだけでなく、価値が競合しているものを競合として調査する必要があります。 - 「あるべき姿」の仮説を立てる
仮説は素早く設定するのが良いと考えます。マーケット内の立ち位置からあるべき姿を描くと迅速化を図れます。この「あるべき姿」の定義では、「どのような価値を提供できている状態が理想なのか」が重要になります。しかしこの段階ではあくまでも仮説として設定します。 - 阻害要因の検討
リニア(直線的)思考で、ステップ2で描いた「あるべき姿」に到達するための阻害要因の検討を行います。あえてリニア思考で考えるのは、その方がより阻害要因が明確に見えるからです。しかしここで明らかになった問題も、まだ本質的なものではありません。 - リフレーミングを用いて、改めて「あるべき姿」を描く(問題化)
本当の「あるべき姿」となる、「創り出すべき価値」について考えます。ここでリフレーミングの登場です。How might weのモデルを使い、「どのようにしたら◯◯の価値が創り出せそうか」という問いを中心においてリフレーミングを行うのが、最もバイアスがかからず本質的な問題を発見できると考えています。
リフレーミングのコツは様々な本に書かれていますが、どの思考法であっても、その核はバイアスに取り込まれないことです。第三者を交えてアイディエーションすると、より広い視野でリフレーミングできるはずです。
リフレーミングによって、より創造的でチャレンジングな問いが設定できると、現状とのギャップがどんどん出てくるようになります。
これが私たちの考える、本質的な問題を導くステップです。
しかしブランド・リフレーミングで問題を定義し、解決策を立案しても、それ一本槍では近年高まっている未来の不確実性、予測しにくい不確実な市場環境に対応できません。そこで私たちは、リフレーミングされた問題を土台として最重要成功要因(KSF)を発見し、施策アクション、そしてKPIと運用にまで落とすプロセスを組んでいます。
不確実性の高い未来の目標への対処
世の中の変化に応じて評価し戦略を修正する仕組みとして、KPIの設定と定期的な見直しが必要になります。SONICJAMでは以下2つの軸からそのKPIを策定します。
1:価値創出のためのKPIツリーからKPIを導く
2:ToBeカスタマージャーニーからKPIを導く
策定したKPIの定期的な見直しをOODAループを用いて行うことで成長する体制を作る、というのが私たちの考え方です。
KPIを設定しなかった場合、どうなるでしょうか?
Analyticsなどの分析でも確かに様々なことが見えてきます。アクセス数の多いページに焦点を当てて分析と改善のトライアンドエラーを繰り返せば、何らかの改善には繋がります。しかしそれは場当たり的になることが多く、「結局この改善はブランド毀損をしているのではないか?」などの議論を置き去りにしてしまいます。
だからこそ、定期的に全体を俯瞰し、都度KPIを再設定することで、重要な指標として機能するのです。
最後に
タイトルにもある通り、究極的には私たちは伝えるべき相手に“価値”を伝えるためにプロジェクトに取り組んでいます。そのために実施しているすべての活動は手段であるといえます。制作物も、コミュニケーションもデザインもWEBマーケティングも何もかもです。
伝える手段についてのノウハウや技術はもちろん重要ですが、すべての根幹である“伝えるべき価値”を間違ってしまうと、当然間違ったソリューションを提供してしまうことになります。だからこそ私たちはその“価値”を発見し、価値を体験できるソリューションを提供するための方法を模索してきました。
ブランド・リフレーミングは本質的な問題を発見することを目的としていますが、そのためにその企業・サービス・ブランド等の価値を明確にすることは、問題の発見と同じくらい重要なことです。
弊社では、このような問題発見のプロセスを伴走型でサポートしています。
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