「風立ちぬ」見ました

公開二日目に。そしてちょっと自分の中で消化してからブログに書こうと思っているうちに、他の人の感想を見たり、プロフェッショナル 仕事の流儀を見たりするうちに若干ブレというか気持ちも変わったり、今さら自分が何かを書いて意味あるのかという気もしたりするのですが、やっぱり書いとこう。

これまでの宮崎作品は「伝えたいこと」をエンターテインメントに昇華させて伝えようとする苦労が作品そのもの、という感じでした。でも今回は「みんなにわかってほしい」気持ちと「わかる人だけわかれば結構」と開き直りが同居したまま、解決せずにそのままぶつけてきたような印象です。

そして主人公はヒーローではなく、私達自身であり、宮崎駿自身である。またそうしてがんばって生きている姿を単純に全肯定しているかのようです。今回の作品に否定的な人はこのあたりに違和感を感じている人が多いのでは?私も実際そうだったし、「普通のユーザーの感覚からすれば、風立ちぬは、戦争産業に従事したり恋人が結核で苦しんでたりするのにまったく主人公に葛藤がないのでびっくりするし、ちょっと共感しがたい(どこに共感すればわからない)映画だと思う。(東浩紀)」という意見にも納得です。

要するに、(期待し過ぎていたせいか)私は泣けませんでした。そして「これは宮さんの遺書(鈴木敏夫)」というのも事前に聞いていたので、なんかチャップリンの「ライムライト」を観た時のようなさみしさを感じました。これが最後の作品になるんじゃないかという予感を感じずにはいられないというか。(あ、ちょっと調べたらチャップリンは「ライムライト」の後にも作品があるようです)

表現のアバンギャルドさは健在だと思いました。特に今回は音。庵野の声、人間の声で表現した飛行機音、全編モノラル。あとは関東大震災の描写とか、まあ過去だとポニョとか千と千尋とかも相当アバンギャルドでしたので、足りないくらいかもしれませんが。

庵野の声については、「いい!」と思った時間帯と違和感を感じた時間帯の支配率が3:7くらいでしょうか。

ところで、私は「もののけ姫はこうして生まれた」が大好きで、DVD3枚組の長さなのに何度でも見たくなるくらい。(「ポニョはこうして生まれた」はDVD5枚でさすがに長すぎる・・・)なので、「夢と狂気の王国」にも期待せざるを得ません。これが面白ければ、「風立ちぬ」はその予告編、ということでもいいくらい。というと言い過ぎか。