喪失の壁
今の壁
少し前の壁
MASSというプロジェクトで、自社のオフィスの壁一面に淺井裕介さんが作品をつくりあげる過程をみんなで共有するという貴重な体験ができました。MASSというコンセプトはこれだけで終わりではなくて、またうちのオフィスだけでやるものではなくて、新しいアート体験を共有していくというコンセプトで今後も続けていくつもりです。
もともと淺井さんの作品は土で描くという性質もあり、耐久性のあるものではないので、短期間で撤去される運命でした。それにしてもあの存在感のある作品がいなくなると、なんともいえない空虚感というか、なにかまだそこに誰かいたような、まるで長年住んだ家を引っ越しで片付けた後のようなやるせなさを含んだセンチメンタルな気持ちになりました。
鑑賞するだけでもなく、購入・入手するのでもなく、体験するというアートとの関係、がMASSのプロジェクトのコンセプトでしたが、終わったときにどうなるか、は予想していませんでした。出来上がるまでのプロセスを共有し、存在を共にし、そして今、喪失感を味わっている。それはちょっと恋愛にも似ている。別れるまでが恋愛、というか。そのせつなさも恋愛の大切な要素。
壁はひっそりと生まれ変わり、真っ白だがそれは以前と同じではない。